&FORCE COLUMN

&FORCEの戦略ブランディング基礎講座(第26回)
「ブランド価値をどのように伝えると効果的なのか?」
【東京・沖縄の戦略ブランディング会社】

こんにちは。&FORCEの広報担当です。
このブログでは、戦略ブランディングについての基礎的な知識を学びたい方のためのお役立ち情報を発信して参ります。

具体的には、次のようなお悩みをお持ちの方にお役立ちできる内容となっています。

「売り上げを安定的に伸ばすためにブランディングが大切って聞いたけど、そもそもブランディングって何?」

「スタートアップ企業として、認知度や信頼感を獲得するためにブランディングに取り組んでいきたいけれど、何をどれから始めたらいいかが分からない・・・。」

「親から会社を引き継いだ後継ぎなんだけど、親の世代とは時代状況も違うし、新しい時代に合わせて会社をブランディングし直してみたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」

知っておくと有益な戦略ブランディングの基礎知識をご説明していきますので、ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。
どうぞよろしくお願いいたします。
(なお、本テーマの記事は連載形式になります。)

戦略ブランディング基礎講座第26回目のテーマは、
「ブランド価値をどのように伝えると効果的なのか?」です。

それでは行ってみましょう!

_1.伝わらなければ価値を認めてもらえない悲しさ

日本には素晴らしいモノづくりをしていらっしゃる企業様が多くあります(もちろん、世界にも)。
私たち日本人の気質とでも言いましょうか、丁寧なモノづくりをする精神は昔から現在まで代々受け継がれているようです。
日本のモノづくりは、世界の人々から賞賛していただけることが多いですね。

しかし、どれだけ素晴らしい品質の商品を開発して売り出したとしても、ターゲット層の顧客にその価値が伝わらなければ購入してもらうことはできません。
そもそも商品の存在が認知されていない、認知はされていても、その商品の価値が理解されていない、さらには、理解されていても、納得や共感まではしてもらえておらず、ブランド価値にまでなっていない商品は世の中に多くあります。

せっかく良質な商品を創り出したのに、ターゲット層の顧客に知られていない、その価値を認めてもらっていないのは実にもったいないことです。
厳しい言い方になりますが、購入につながらないブランドは、売り手側の自己満足に終わってしまうという悲しい現実があります。

そのため、そのブランドが持つ価値をしっかりと顧客に伝わるようにしていかなければなりません。
ブランド価値を効果的に伝えることで、認知→理解→納得→共感というステップアップ方式で、顧客の中での良好なブランドイメージの形成が可能になるのです。

_2.顧客の思考タイプ別に伝えるメッセージ内容や見せ方を変える

そもそも、顧客がイメージするブランド価値の種類にはどのようなものがあるのでしょうか?
これは前回の記事(第25回)で詳しくご説明しましたように、①機能的価値、②情緒的価値、③自己表現的価値、の3つがあります。

顧客にブランド価値を認めてもらうためには、どの価値も大切なもので、一概にどの価値が優先するということはありません。
トップブランドともなると、ターゲット顧客や商品の特徴に合わせた比重の偏りはあるものの、どの価値も平均点を上回る価値が顧客から認められています。

ただし、類似商品で溢れかえっている現代の成熟市場においては、競争が激化するにつれて商品の同質化が進みます。
つまり、機能的価値だけでは各ブランドともに横並びになってしまい、差別化がしにくくなるのです。
そのため、差別化手段として低価格に訴えるしかないといった状況に陥りやすくなります。

そういった不毛な低価格競争を回避するために、成熟市場においては情緒的価値や自己表現的価値に大きな比重を置いて差別化を図ろうとするブランドが増えてきています。
情緒的価値や自己表現的価値は、創業者や製品開発者たちの体験からくる想いに基づくものが多いので、きちんとストーリーを作れば、容易には真似できない価値だからです。

「そうは言っても、機能的価値を重視しているお客さんも多いんじゃないの?」と疑問に思う方もいらっしゃると思います。
その疑問はまさにおっしゃる通りですね。
機能的価値を伝える重要性が全くなくなったわけではありません。
3つのブランド価値の種類のうち、どの価値に重点を置いてターゲット顧客に伝えていくかは、まさに顧客のニーズや思考のタイプによって柔軟に変えていくべきです。
せっかくの価値もターゲット顧客に伝わらなければ意味がなくなってしまうからです。

そこで、顧客の思考タイプを大きく分類してみますと、感情的思考タイプである右脳型の顧客と、論理的思考タイプである左脳型の顧客に分かれます。

右脳型の顧客は、ブランドから受ける感情やイメージを重視するタイプの人で、気持ちや五感の感覚、また、「〇〇さんがオススメ!」といった周りの人の評価などに心を動かされることが多いです。
例えば、高級ブランドバッグや洋服を身にまとうことによって得られるステータス感に憧れ、そこにブランド価値を感じる人も、このタイプに分類されます。
また、他者からのレビューが高評価であることも、右脳型タイプの顧客にとってはブランドに対する良いイメージを形成する要素になることが多いです。

他方、左脳型の顧客は機能的価値の方をより重視するタイプです。
性能や機能、耐久性、コストパフォーマンスといったトータルの品質を重視するタイプと言って良いでしょう。
左脳型タイプの顧客は、買い物に失敗したくない気持ちや、少しでも合理的に良いものを安く購入したいというコスト意識を持っていることが多いです。
合理的な選択の結果としての安心感やお得感を求めていると言ってもいいと思います。
また、合理的な比較検討を重ねた結果、他者からどう思われようと、自分自身が納得できる購買活動をすることができたかどうかを重視することが多い傾向にあります。
そのため、左脳型タイプの顧客は、自分が納得できる理由付けを求めて網羅的に情報収集を行い、比較検討をして慎重に購買活動を進めます。
例えば、性能的に優れた点や制作サイドのこだわり点などを重視して評価することが多いです。

以上見てきましたように、ターゲット顧客の思考タイプに合わせて、ブランド価値の伝え方を適切に使い分けていく必要があります。
つまり、右脳型タイプの顧客には、直感やイメージに訴えかけられるように面白い物語性のある動画を作ったり、人気俳優を起用してビジュアル的にかっこいいポスターやポップなどを作ったりすると良いでしょう。
また、周りの人からのレビューが高評価であるものを好む方も多いので、タレントやインフルエンサーを起用してお勧めのブランドとして紹介してもらうのも良いでしょう。
さらに、伝え方としては、論理的な説明文のような内容ではなく、物語性があるようなストーリーを作ると感情を揺さぶりやすくなるため、それだけブランド価値が伝わりやすくなります。
例えば、何気ない日常を送っていた主人公(顧客)が、その商品ブランドと出会ったことで、新たな日常生活を手に入れていくといったストーリーは代表的ですね。
物語性あるストーリーによってターゲット顧客にブランドに対する感情移入を促し、ファンになってもらいやすくするのです。

他方、論理的な説明を好む左脳型タイプの顧客には、実験のプロセスや結果、他ブランド商品との比較検討資料、学者や専門機関などからの権威性ある証言などといった根拠をしっかりと配置した説明文的なストーリーで伝えるのが良いでしょう。
文字情報が豊富にあると、詳しく丁寧に説明している印象を持ってもらいやすいタイプでもありますので、顧客が知りたい情報を網羅的に分かりやすく説明すると伝わりやすくなります。

もちろん、実際の顧客は、はっきりと左脳型タイプと右脳型タイプに分かれるわけではなく、どちらかに重点の置き方が異なるものの、どちらも併せ持ったタイプの顧客がほとんどです。
したがって、物語性を感じるストーリーだけでなく、しっかりと論理的に説得できる説明文的なストーリーも併せ持った<折衷型のストーリー>を構築して顧客に伝えていく必要があります。

_3.説得力ある伝え方をするのに必要なものとは?

左脳型タイプの顧客に対してであれ、右脳型タイプの顧客に対してであれ、伝え方に説得力を持たせるには、しっかりとしたエビデンス(=事実や体験に即した証拠)に基づいて伝えることです。
エビデンスに基づいてストーリーを語る方が、そうでない場合よりも、ブランド価値を示すのに最も明確で分かりやすくなるからです。
特にブランド固有の特徴としての他ブランドとの違いをエビデンスで示すことにより、顧客に理解してもらいやすくなります。
また、エビデンスが強力なものであればあるほど説得力を増し、競合との差別化を図りやすくなります。

では、具体的にどのようなエビデンスをストーリーの中に盛り込めば良いのでしょうか?

①競合より優れている特徴(優位性)
②競合にはない独自の特徴(独自性)
③理解しやすい概念

などがエビデンスの例として挙げられます。

①の優位性とは、軽い、早い、安い、小さい、多機能、高性能、耐久性がある、新しくて斬新、ファッション性が高いなどといった価値です。

②の独自性とは、独自の技術や考え方、素材、デザイン性、加工法、仕入れルートや販売網を持っているなどといった価値です。
例えば、他ブランドにはない特許を取得していることは独自性ある価値の1つになります。

③の理解しやすい概念とは、一つ一つの特徴は専門的すぎて伝わりにくいが、数多くの特徴が集まってどんな価値をもたらすかをキャッチコピーなどで表した理解しやすい概念のことです。
例えば、再生可能エネルギーによって1つの街全体を省エネ化して、快適な住みやすい街にする計画には様々な技術や知識、経験などが必要になりますが、一言で「エコタウン都市化」というキャッチコピーがつけば、理解しやすい概念になります。
つまり、その価値が理解しやすい概念に早変わりします。

以上のような3つの内容を示すエビデンスを提示することによって、伝える内容に説得力が生まれるのです。

ただし、注意点としては、エビデンスを提示することで理解を得るための説得力は生まれても、共感やその先の応援したい気持ちを引き起こすまではなかなかいかないのが現実です。
エビデンスだけのストーリーだけですと、感情がなかなか乗ってこないからです。
もちろん、エビデンスがしっかりしていないと顧客に安心や信頼感を持ってもらえないので、門前払いになります。
しかし、それだけで終わってしまいますと、心を揺り動かすまではなかなかいかないので注意しましょう。
やはり、エビデンスにプラスして、顧客の感情を揺り動かすような物語性も伝えるのがブランド価値の良い伝え方になります。

_4.まとめ

せっかく創り出したブランド価値がターゲット顧客はもちろんのこと、世の中の多くの人々に支持してもらえるようにするために、伝える内容や伝え方を工夫する必要があります。
そこで、ターゲット層の顧客ニーズをよく把握することから始め、「誰に」「何を」「どんなふうに」「どんな媒体で伝え」、「どんな未来像や感情をイメージしてもらうか」をしっかり検討してストーリーを練り上げましょう。
ターゲット顧客層の思考タイプに合わせてストーリーの内容や伝え方を柔軟に使い分けるのが効果的でしたね。

最後にもう一度お伝えします、ブランド価値は顧客に伝わってなんぼです!

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

次回の戦略ブランディング基礎講座(第27回)では、「理想的なブランドパーソナリティの鮮明化とは?」をテーマにご説明していきたいと思います。

それではまた次回にお会いいたしましょう。

私たち&FORCEは、東京・麹町と沖縄・那覇に拠点を置く戦略ブランディングカンパニーです。
「モノ創りを価値あるものへ」を理念に、全国の企業様への戦略ブランディング支援、戦略PR立案・実行支援を中核に事業を展開しております。

私たち&FORCEが心がけているスタンスは、「お客様に一歩先を提示して伴走する戦略ブランディングサービス」をご提供することです。
クライアント様の確かなブランド構築という目標に向かって、共創・伴走させていただきながら事業が自走していく状態になるまで戦略ブランディングサポートを継続致します。 クライアント様に1人で走っていただくようなことは致しません。

ブランディングのお仕事というのは、「考え続ける」お仕事です。
それも、独りよがりの考えではなく、クライアント様の想いやこれまでに紡いできたストーリーをしっかり汲み取って、どうやったら喜んでいただけるかを共に考えていきます。

&FORCEの「&」には、代表・瀧口幸明の<誰かと一緒に何かを作る力は無限大>という想いが込められています。
そのため、クライアント様には様々な業界・業種の方がいらっしゃいますし、弊社のメンバーも年齢・性別やバックボーンを問わず様々です。
様々な人や文化が混ざり合うことから新たな価値が生まれてくると信じております。

私たち&FORCEは、戦略ブランディングや戦略PR関連のお仕事をさせていただいておりますが、特にスタートアップ企業の経営者様や事業承継後の後継ぎ経営者様の戦略ブランディングに関するお悩みに全力で寄り添い、お応えして参りたいと思っております。

&FORCEにご興味を持っていただけましたら、いつでもお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
クライアント様のお役に立てることを心より願っております。

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[ 参考文献一覧 ]
1.デービッド・アーカー「ブランド論」(ダイヤモンド社 2015年)
2.デービッド・アーカー「ストーリーで伝えるブランド—シグネーチャーストーリーが人々を惹きつける」(ダイヤモンド社 2019年)
3.田中洋「ブランド戦略・ケースブック2.0」(同文舘出版 2021年)
4.田中洋「ブランド戦略論」(有斐閣 2017年)
5.音部大輔「The Art of Marketing マーケティングの技法」(宣伝会議 2021年)
6.羽田康祐「ブランディングの教科書:ブランド戦略の理論と実践がこれ一冊でわかる」(NextPublishing Authors Press 2020年)
7.中川淳・西澤明洋「ブランドのはじめかた」(日経BP 2010年)
8.中川淳・西澤明洋「ブランドのそだてかた」(日経BP 2017年)
9.水野学「『売る』から、『売れる』へ。水野学のブランディングデザイン講義」(誠文堂新光社 2015年)
10.西澤明洋「ブランディングデザインの教科書」(パイ インターナショナル 2020年)
11.乙幡満男「デジタル時代に知名度ゼロから成功する!ブランディング見るだけノート」(宝島社 2021年)
12.乙幡満男「ブランディングが9割」(青春出版社 2020年)
13.齋藤三希子「パーパス・ブランディング〜『何をやるか?』ではなく、『なぜやるか?』から考える」(Kindle版 2022年)
14.デザインノート編集部「デザインノート Premium 最強のブランディングデザイン: 最新デザインの表現と思考のプロセスを追う」(誠文堂新光社 2021年)
15.バイロン=シャープ・前平謙二「ブランディングの化学 誰も知らないマーケティングの法則11」(朝日新聞出版 2018年)
16.佐藤圭一「選ばれ続ける必然 誰でもできる『ブランディング』のはじめ方」(講談社 2016年)
17.丹羽真理「パーパス・マネジメント」(クロスメディア・パブリッシング 2018年)
18.山口義宏「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 『顧客体験』で差がつく時代の新しいルール」(翔泳社 2018年)
19.バイロン=シャープ・ジェニー=ロマニウク他「ブランディングの科学 新市場開拓編 – エビデンスに基づいた成長の新法則–」(朝日新聞出版 2020年)
20. 楠木建「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社 2010年)
21.ジョン・ムーア「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」(ディスカバー・トゥエンティワン 2014年)
22.小山田育・渡邊デルーカ瞳「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」(クロスメディア・パブリッシング 2019年)
23.中川淳「経営とデザインの幸せな関係」(日経BP 2016年)
24.西口一希「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社 2019)
25.フィリップ・コトラー「コトラーのB2Bブランドマネジメント」(白桃書房 2020年)
26.片山義丈「実務家ブランド論」(宣伝会議 2021年)
27.アル・ライズ「ブランディング22の法則」(東急エージェンシー 1999年)
28.クレイトン・M・クリステンセン「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」(ハーパーコリンズ・ジャパン 2017年)
29. 芹澤連「“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?」(日経BP 2022年)
30. 森岡毅/今西聖貴「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」(KADOKAWA 2016年)

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